絶対破廉恥ルドレン 2nd Sex ザ・ハウンド応答せよ act.12
明と小鹿は地下研究施設を移動していた。通路の構造は事前にドブネズミに憑依した明が確認済みだ。警備員の数も少なく、誰にも見とがめられずに進むことができた。
「薫ちゃんたち、うまくやってくれているみたいね」
「そうですね。おれたちも急ぎましょう」
明は小鹿を促して、足を速めた。
と。
むぎゅ。
明が不意に足をとめたせいで、小鹿が明にぶつかった。明にしてみれば、柔らかい小鹿の胸が背中に押し当てられる格好になったが、それを喜んでいる場合ではない。
「どうしたの?」
「犬がいます。この先のブロック」
明は動物と精神感応して、それを自在に操る複合能力者だ。動物の気配を感じる能力にも長けている。
小鹿は通路の先に目をこらしたが、それらしきものは見えないようだ。
「どうするの?」
「憑依してみます。たぶん、この施設内で放し飼いになっている犬でしょう。自由に動けるはずです」
「でも、そうしたら、明くんのこの身体はワンちゃんになっちゃうんでしょう?」
「そうですね。だから」
明は小鹿に頼んで、自分の手首と両脚に錠をかけてもらった。
こうしておけば、小鹿に襲いかかる心配もない。味方に手足を縛めてもらうとうのも変な話だが……
「敵が来たら、とりあえず逃げてください」
言い置いて、明は通路の先、ひときわ大きなドアの前でおとなしく伏せているドーベルマンに憑依した。
ドーベルマンは牡だった。ほっとする。動物の身体とはいえ、雌に憑依すると何かと戸惑うことが多いからだ。
それにしても、獰猛な犬らしく、憑依したとたんに全身に破壊衝動がわき起こってくた。この犬は常に戦いを求めている。実際に戦闘訓練も受けているのだろう。
「呂七号、待たせたの」
しわがれた声がして、電動車いすが近づいてきた。どうやらこの犬の主人で、用がある間、犬に張り番をさせていたらしい。
「どうやら、時計を進める素材がそろってきたようでな。まずそのひとつを検分に行こうな」
明は悟る。こいつが黒幕だ。この場でその喉笛を噛みきってしまいたい衝動をおぼえたが、ぐっとこらえる。こいつと一緒ならば、初音のいる場所に容易に近づけるだろうし、いざとなれば人質に取ることもできる。
問題はE-ECMだが、女性にしか顕著な効果はないらしい。男には凶暴化の影響があるともいうが――今のところ、とりたてての異常は感じない。ただ、この地下研究施設のどこまでその影響が及んでいるかはわからないのだが……
車いすは曲がりくねった通路を進んでいく。明はふと、残してきた小鹿が気になったが、あと少し、あと少しだけ、と思ううちに戻るタイミングを失った。というのも、車椅子は、ある区画で停止したからだ。
そこは地下にしてはやけに広い空間で、コンクリート打ちっ放しの倉庫のような場所だった。
ライトが煌々と光り、カメラなどの機材が意外なほど本格的に設置されている。パッと見、映画の撮影現場のようだ。
だが、気のきいたセットがあるわけでもなく、きらびやかな俳優たちがいるわけでもない。
そこにあるのは――
「あき、らぁぁぁっ!」
絶望にかられた少女の絶叫。
つづく
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