明は自分がどうしたのか、意識していなかった。初音がされていることがなんなのか、きちんと理解してさえいなかった。
ただ、突進していた。老人の金切り声が聞こえたような気がした。いや。それはけしかける声だったようにも、笑い声だったようにも感じた。
初音への射精を終えて、にやけきった牡の喉笛に、明は食らいついた。
だが、血潮は飛ばず、骨を砕く感触もなく、明は床にたたきつけられていた。
「もう少しですぷらったぁむーびーになるとこだったの。男の場合、E-ECMの効き方はどうも不安定じゃていかん」
老人が手元のスイッチを操作しながら、低く嗤った。
「きょ……教授……胆が冷えましたよ」
男が精液まみれの男根を初音から引き抜きながら情けない声を出した。
「で、これもB.A.B.E.L.の?」
ドーベルマンを見下ろしながら男は訊く。老人はうなずき、ナースコールのようなブザーを鳴らした。
一瞬遅れて、「明」と、後ろ手に縛られた小鹿圭子が現れる。「明」と小鹿は下半身裸だ。
「おもしろい能力じゃ。動物と人格を入れ替えるとはの。ただ、呂七号はいかん。こやつの脳は人と変わらんからの。女ひとりたぶらかすことくらい容易。のぅ、呂七号」
「ハイ、ゴシュジンサマ」
明の姿をした呂七号が機械のようにはっきりとした発音で人語をしゃべった。
「いちおう解説してやるとな、これは、超能力とは違うぞ。人間の幼児の脳と犬の脳をつなげただけじゃて。忌むべきESP波など出さぬ、まっとうな実験動物じゃの。で、何が起こったのかを教えてやろうかの」
老人はなんでもないことのように言う。さらにその表情が楽しげにゆがむ。
「かんたんな理屈じゃ。呂七号はこの女と二人っきりになったら、こう言えばよかったのじゃ。『モドリマシタ、コジカサン、テジョウヲハズシテクダサイ』とな」
その後、何が起こったかは、白濁した体液にまみれた小鹿の内股を見ればわかる。
小鹿は細かく嗚咽していた。ごめんなさい、明くん、初音ちゃん……そう繰り返しているようだ。
「その女はエスパーではないからの。動画をネットに流すのは勘弁してやるが、警備員どもの慰み者にはなってもらうしかないの」
老人が命じると、警備員たちが小鹿を別室に連れて行く。その顔は下卑た期待に彩られている。
「呂七号はまだやりたりないようじゃの。どうじゃ? そっちの娘ともやってみたいか?」
「ハイ、ヤリタイデス」
明の姿をした「犬」が舌を出しながら下卑た表情を浮かべる。股間はすでに勃起している。
おれのが……あんなになってるなんて……ドーベルマンの中の明は驚愕する。赤黒く膨張したペニスは、自分のモノとは思えぬ凶悪さをたたえていた。
「犬」は、息も絶え絶えな初音に近づいた。明の姿だ。
「明」は犬の姿で、それを見ているしかない。
「ハツネ、ダイジョウブカ」
「犬」は初音を抱き起こす。うっすらとまぶたを開ける初音。
まだ、意識は混濁しているようだ。何が起こっているのか正しく認識していない。
それでも、明の顔を見て、初音の表情がゆるむ。と同時にメタモルフォーゼが解けて、ふだんの初音に戻る。
「明……よかった……きてくれた」
「犬」はそんな初音の股間に指を挿し込んだ。
「ひゃっ、あきら!?」
どろりとした白濁液を「犬」は掻き出した。指でその粘りけを確かめる。
「ハツネ、オマエハ、ベツノオスニ、オカサレタ」
「それ……いゃ、だめっ! 明、見ないで! 見ないでぇっ!」
ようやく自分の身に何が起こったのかを思い出す初音。そして、それをいちばん見られたくない相手に見られてしまったことも。
「セイエキクサイ、メスダ……ダガ、ハツジョウキノ、メスイヌハ、ソンナモノダ」
むしろ、それで昂ぶるのが牡だ。「明」の股間は怒張していた。
「シャブレ」
命じた。
初音は上目遣いで「明」を見つめ、鼻をひくつかせる。間違いなく明だ。
明の匂いを間違える、はずがない。
初音は、「明」のペニスをくわえた。間違いなく自分の意思で、だ。明にごめんなさいをするには、言うことをきくしかない。
「ホカノオスニシテイタヨウニ、シタヲツカエ」
初音は従った。明のたくましい男根に舌を這わせ、陰嚢を口に含んだ。
明の匂い。牡の匂い。
初音の官能が自然と高まっていく。じゅんじゅんと、濡れていくのがわかる。
自覚している。さっきとは違うことを。この発情は、むりやりもたらされたものではなく、初音自身が望んでのものだということを。
「明」のものを吸い込み、頭を前後に振る。初音が覚えた「技」は自ら喉奥まで陰茎を導くイラマチオだった。
「オオ……ニンゲンノ、クチマンコ……キモチイイ」
「明」は気持ちよさそうに腰をうちつける。
初音はひたすらに耐える。それが快感に変換されていく。
「明」は唐突に射精する。初音はその精液を飲み下し、はげしく興奮した。
つづく
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