「とある科学」も好きなんですが、これも書くとすれば時間がかかりそうですね……
ビリビリさんはもちろんのこと、黒子も佐天さんも初春も魅力的なので……
ちょっと試しにシチュエーションをつくって書き出してみました。
とある科学の操心術士(マインドコントローラー)
「佐天涙子――レベル0、か」
私は学園都市の個人情報ファイルに目を落としてから、おもむろに患者と向かい合った。
黒髪ロングの少女がパイプ椅子にかしこまって座っている。
今時の女子中学生と違い、ナチュラルな感じだ。髪や身だしなみにはそれなりに気をつかっているが、知能の低さをたれながすような過度なメイクやネイルには手を出していない。節度というものをわきまえている生徒のようだ。
去年まで小学生だったということを実感させる肩の線の細さや稚ない胸元も好ましいが、それよりも何よりもレベル0というのがいい。
この学園都市で。
超能力開発を目的としているこの学園都市で。
レベル0というものが何を意味するか。
クズである。
役立たずなのだ。
ただ息を吸って吐いて、小便とクソをたれ流す廃棄物相当品なのだ。
本人にもその自覚があるのだろう。だから、この医学審問官室に呼び出されて、極度に緊張しているのだ。
「学園都市から放擲されるかもしれない」
その恐怖を感じているのだ。
学園都市というのは特別な場所だ。さまざまなハイテク企業の最先端技術がこれでもかというほど投入され、予算も惜しまず、さまざまな実験プログラムが走っている。
その突っ走り具合は、とある財団が世界的に有名な「かの賞」を与える対象から学園都市関連の研究施設を外してしまったことからもわかる。普通に選考すれば、文学賞と平和賞をのぞくすべてを学園都市がかっさらうことになっていただろう。今年も去年もその前も――過去はむろん、これから先、未来に至るまで。
だから、この都市に暮らす学生たちは――もとより学園都市の住民の大半は学生か教師か学校関係者だ――世界でもっとも優れた教育を受けていることになる。
外の世界よりも進んだテクノロジー、外の世界よりも恵まれた環境、そしてネームバリューも含めて、学園都市で学生時代を過ごした者は社会的に優位に立てる。
だが、逆にそこから落ちこぼれた者はどうなるか? しかも適性ナシとして脱落した者は――? 超能力者のなりそこないとして、外に戻っても世間の冷たい目にさらされなければならない。
だから、レベル0の脱落者たちによる犯罪組織・スキルアウトのようなものもできる。彼らは「いる資格もない」のにかかわらず、学園都市にしがみついている卑怯者だ。
まあ、つまりだ。
レベル0の者は、常におびえている。無能力者のレッテルを貼られ、この学園都市にいる特権を失うことを、心底、恐れている。
ファイルによれば、佐天涙子は完全に適性なしというわけではないようだった。小学生のときの予備試験では、たしかに萌芽はあったようだ。だから、育成プログラムに合格することができた。
だが、学園都市の中学に入学したあとは、目立った進歩はしていない。
レベル0だからといって、すぐに退学になったりするわけではない。高校生になってもまったくレベル0から脱出できない落ちこぼれ生徒が、のうのうと学園生活をエンジョイしている例もある。
だが、まったく適性なし、無理無駄不可能、とわかった場合はその限りではない。放校処分もありえる。
その判断をするのは学校単位ではなく、各学区に存在する医学審問センターなのだ。学校はどうしても生徒を守りたがるからだ。
私は、その審問センターの嘱託で審問官を務めている。審問官というと怖い響きがあるが、実際はカウンセラーのようなものだ。学園都市に招かれた学生はいずれ才能の片鱗を認められた者たちばかりなので、そうかんたんに放出したりはしない。超能力者として開花しなくても、その能力が別の放校で花開くことも少なくない。伸び悩んでいる生徒の心と体のケアをおこない、健やかな育成を促す――というのが、崇高なる審問官の仕事なのである。
たいていの場合は。
だが、こんなおいしそうな獲物がびくびくしながら現れたら、そりゃあイタズラしたくなるよなあ、常識的に。
――って、佐天さん、ヤラれちゃうんだろうな……
きっと初春が助けようとするんだろうなあ……
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