ルイズのねこ耳にゃんにゃんNIGHT!(3)
3
その日は、宿場にたどり着く前に夜を迎えてしまった。
騎士隊は街道から少し入ったところに開けた土地を見つけると、そこに天幕を張った。
天幕は、10人くらいが寝られる大きさがあり、三つほどある。それぞれに蛇と星、龍と月、獅子と太陽の意匠が染め抜かれている。
そのうちのひとつが隊長用――なのだが、今回はギーシュがいないので、サイト用だ。
「えーっと、獅子と月が隊長用だっけ、龍と太陽だっけ……」
「龍と月が隊長用で、蛇と星がぼくら、獅子と太陽は他の隊員用だよ」
マリコルヌが指摘する。
「あ、そうなんだ」
サイトは天幕設営の指揮を執るのは初めてだったので、少し手間取ってしまった。
「と、とにかく、それぞれの天幕は少し距離を置いて設営すること……その、声とか聞こえないように」
もちろん、自分の天幕にルイズを泊めることになるから、その配慮だ。
だって、旅先だし、気分は開放的になるし、シエスタもいないし……
そんなサイトの下心は部下達にはまるわかりだったが、それでも、それぞれの天幕は距離を置いて設営された。
天幕の設営が終わる頃には陽は傾いていた。
火をおこし、携行してきた干し肉をあぶる。ワインの瓶が回される。
宴会の始まりだ。
巡回はだいたいこんな感じである。宿場に着けば、酒場を借り切っての宴会となるし、有力者に招かれての祝宴になることもある。いずれにせよ、毎晩飲んで騒ぐのである。
さほど強敵と戦うこともないとたかをくくっているのか、隊員たちは気楽に騒いでいた。
サイトもワインを飲み、肉を食べたりしたが、ルイズの姿が見えない。
「なあ、ルイズ見なかったか?」
隊員達に聞いても首を横にひねるか、ワインの瓶を押しつけてサイトにも飲むように迫るか、どっちかだった。
「あ、そういえば、さっき、泉のある場所を聞かれたよ」
ようやく答えを返してきたのは一人の隊員だった。この近くには、清水がこんこんとわき出る泉があるらしい。
「そうか……じゃ行ってみるよ」
サイトはルイズのためにあぶった肉を刺した串とワインの瓶を持って、隊員に教えられた方に向かった。
つづく
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