授業
教室で、真由美は机に突っ伏していた。口の中がねちゃねちゃする。中出しされた精液は子宮や膣に残ったままだ。おしりも、いやだと言っても中出しされてしまった。
もちろん、シャワーでできるだけ洗い流したし、トイレにも行った。それでも――残存感を完全には消すことはできない。
白いねばねばが全身にこびりついている気がした。
「どうしたんだ、真由美?」
声が降ってきた。あわてて真由美は顔を上げる。
色事好男が真由美の机のそばに立っている。鳥羽美琴もいる。美琴は真由美の親友だ。
二人とも心配そうな表情を浮かべている。なんでだろう、つきあっていると表情まで似るのだろうか。
数週間前、美琴が好男に告白し好男はそれを受け入れた。
変な話で、真由美は告白前には美琴から、告白後には好男から相談を受けた。
美琴はもともと好男ではなく、別の男子のことが好きだったのだが、彼が転校してしまって――顔はおぼろに思い出せなくもないが名前はもう出てこない――それくらいの期間しかクラスにいなかったのだろう――好男のことを好きになったらしい。
「いいかな、真由美ちゃん、好男くんに――告白しても」
「なんでっ、あたしに断るかなっ!? あっ、あんなスケベバカっ、美琴にはもったいないよっ! いやっ、ちがっ! 逆っ!」
大慌てで取り繕いながら、真由美は美琴の応援をすることを誓い、実際にお膳立てまでしてやった。
そして、告白後、めずらしく思い詰めた様子の好男からは――
「あのさ……鳥羽とつきあうかどうかだけどさ……真由美はどう思う?」
「だっ、だから! あたしに聞かないでよっ! ってか、美琴みたいな可愛い子からの告白断ったら普通死刑よ、死刑!」
「そりゃおれだって鳥羽のこと、なんていうか、なんだか守ってやらないといけない気はするんだ、責任があるっていうか――なぜかわからないけど。でもさ……」
「でも?」
「おれはさ……その……ほんとはおまえのこと……」
1秒後、真由美は神速の払い腰で好男を投げ飛ばしていた。その続きを聞くわけにはいかなかったから。
それがだめ押しとなり、好男と美琴はつきあい始めた。
真由美にとっては、依然として美琴は一番仲がいい友達だし、好男が幼なじみでケンカ友達であることは変わらない。
「朝練、キツかったの?」
美琴が真由美に身を寄せてくる。同性ながら、白くて柔らかくていいにおいのする肌だ。だが、そのにおいの中に、好男のにおいに似たものを感じて、真由美は身体を堅くする。
「――だいじょぶよ。部活の練習なんて、強化合宿に比べたらぜんぜん楽。ただ、ちょっと早起きがこたえてねー」
真由美は何でもないような表情を作る。
「無理すんなよ? 試合の前に身体こわしたら元も子もないし――」
好男も本気で心配しているような表情で言う。なんで、そんなに優しくいうのかな、と真由美は思う。前とか、もっと乱暴だったじゃん。あたしのこと「オトコ女」とか言ってさ――けっこう傷ついてたんだぞ――でも、そんなことは言えない。
そんなこと言う資格は自分にはない。
つづく
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