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超世紀莫迦 WEBLOG

□ ゼロの使い魔 □

ねこにゃんNIGHT 2.9 ルイズのゆううつ (上)

    1. ルイズのゆううつ

「はあ……」
 休暇期間中で人気のない学園の中庭のベンチでルイズは溜息をついた。
 サイトの浮気が原因ではない。むしろ、最近のサイトはルイズにぞっこんといえる。あの乳牛メイドや、無駄に色っぽい姫様や、けしからん胸を持つハーフエルフとも適度な距離を保ちつつ、一番はおまえだオーラをルイズに向けて送ってくる。(ルイズはタバサをライバル視していない。主として胸的な意味で)
 それはルイズにとっては望ましい状況で、溜息などでるはずはないのだ。
 なので、その憂鬱さは恋愛が原因ではない。
 単純に、体調が悪いのだ。
「まったく……どうして女の子ばかり……不公平だわ」
 生理である。もうそろそろ終わる頃で、だいぶ楽になったものの、二日目あたりは起き上がるのも億劫だった。
 もちろん鈍感なサイトがそれに気づくはずもなく、風邪をひいたんじゃないかとか、食あたりじゃないかと騒ぎ立て、シエスタに叱られていた。
 でも、生理明けは悪いものではない。生命力がみなぎってくる実感があるし、肌もつやつやスベスベになる。自慢の桃髪ブロンドもますますその艶を増すのだ。
(そうしたら、サイトったら、ますますわたしのこと好きになるわ。ううん、もうかなり超好きな感じだから、超超超大好きになるわ……)
 などと思いつつ、顔をにやけさせる。その間だけは身体の不調さも忘れる。
「なにヘラヘラしてるんだい?」
 無粋な声がルイズの妄想をかき消す。
 ルイズは眉をひそめながら顔を上げる。
 はたして、そこにはマリコルヌが立っていた。
 小太りでちんちくりんの少年で、ルイズにしてみれば同級生という以外に意味のない存在だが、ある事件がきっかけで、ルイズは彼がひどく苦手になった。
「学園内では話しかけないでっていったでしょ――あんた帰省したんじゃないの?」
 ルイズはそっぽを向いて、怒ったような声を出す。
「そんな言い方ないだろ? ぼくは友人として心配してあげたのに」
 マリコルヌは大げさに両手を広げてみせた。
「ぼくたちの友情の濃厚さはきみもよくしってるだろ? しっかり記録されているんだから――これに」
 掌に水晶のかけらを載せてニヤニヤ笑っている。
(ああ、またなの――)
 ルイズの胸がもやもやしたものに包まれる。
 記録水晶――
 以前、水精霊騎士隊の遠征のとき、「サイトの天幕」と「もてない男子組の天幕」を間違えて――しかもネコミミ+きわどい水着姿で闖入し、ルイズも含めて全員泥酔していたために、一大乱交になってしまった――その様子を記録した水晶だ。
 水晶は、乱交に参加した男子全員が分割して持っていて、ルイズは彼らには逆らえないのだ。
「こ、この前ので、も、もう、おしまいよ! そういう約束だったでしょう?」
 脅されて、全員と順番に――ルイズはその時の恥辱を思い出し、顔を赤くする。
「でも、男って、一週間も経てばもうパンパンなんだよね。もう鼻血がでそうなくらい」
 マリコルヌが自分の股間を指さす。そこはすでにもっこりしている。
「そんな……こんなとこでなにいってるの!?」
 学園の中庭――今は休暇中で学生の数が減っているとはいえ、白昼だ。
「大丈夫だよ、ほとんど学生は実家に帰ってるし、残っているのは、出動の可能性のあるぼくら水精霊騎士団の精鋭ときみやサイトくらいなものさ」
 サイト――
 その名前にルイズは反応し、周囲を見渡す。幸い、ルイズの使い魔の少年の姿はない。
「サイトなら、コルベール先生やキュルケたちといっしょに、新しい風石機関の実験に行ってるよ。ほんとはきみも行くはずだったろ?」
 そうだ――体調が悪かったから――
 二、三日で帰ってくる、そういう話だった。シエスタ、タバサやイルククウ、ティファニアも一緒だ。
「だから、大丈夫だよ」
 マリコルヌはルイズに身体を寄せてくる。
 ルイズの隣に強引に座り、太腿をなでる。
「いや! やめて!」
「あれ、ふしぎだな? やめて、って聞こえてきたけど?」
 スカートに手を入れて、下着に触ってくる。
「だめ! いま、せ……生理なの……だから……」
 情けない想いでいっぱいになりながら、ルイズはマリコルヌを押しのける。

                 つづく

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Date:2011/11/07
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