[金曜日]ドラマ撮影(スペシャルドラマ「美耶姫異聞」) その2
スタートがかかった直後だった。
美耶子の頬が鳴った。
いきなりの平手打ち。美耶子が呆然としているところに、南小路がのしかかる。
「ほうら、美耶姫、抗ってみよ、あやかしの力でわしを倒してみよ――できぬか、できぬだろう?」
南小路はガチに美耶子を押し倒し、裾を乱暴にはだける。
カメラテストの時と同様、美耶子は下着をつけていない。
「どぉれ、美耶姫のお大事を検分させてもらおうぞ――あの若侍に散らされておるか、おらぬか」
美耶子はまだショック状態らしく、演技もへったくれもない。
南小路によって股間を開かれて、恥ずかしげな演技も哀しみの演技もできないまま、ただただ、圧倒される。
性器を乱暴に広げられる。小陰唇を左右に限界まで引っ張られ、膣内がめくり上がりそうなほどに。
それ自体は台本にもあるシーンだ。広げられた美耶子の膣口には処女膜がCGで追加されるはずだ。
南小路がその部分をのぞき込む。
「たしかにあるぞ、乙女のあかし。それはそうであろうのう、こんなに小さな女陰(ほと)では、男のモノなど入らぬわ」
指を、ぐりん、と。
美耶子の中に挿し込む。
「あひっ! ひゃうっ!」
演技ではない、マジの悲鳴だ。
本来なら、ここで美耶子は自ら純潔を示すシーンのはずだ。だが、南小路のアドリブは、それを許さない。
「どうら、穴を広げてやろう、わしのものでもおさまるようにな」
いきなり、指で美耶姫の乙女のあかしを破ってしまった――
指で乱暴に突き上げる。
「あああああ、いたい! いたいいいぅ!」
美耶子の悲痛な声。演技で出せる声ではない。
「ふはは、でてきたぞ、乙女の涙、赤いしずくが」
血だ。南小路が指を出し入れするたびに、美耶子の性器から赤い液体がにじみ出る。
実際の美耶子に処女膜などない。乱暴にされて粘膜が傷ついたのか――
これはむちゃくちゃだ、暴力行為だ。やめさせないと――
おれが出ていこうとしたとき、桃山園がものすごい形相でおれの行く手をさえぎる。
「あんた、この現場を壊したら、殺すわよ」
囁き声ながら有無を言わせぬ強さを秘めている。あの桃山園が。しかし、黙ってられるか。
「美耶子が痛がってるじゃないか、ケガまでしてるんだぞ! いくらなんでもやりすぎだ」
「南小路欣也が女優にケガなんかさせるわけないでしょ。五十年以上のキャリアで、南小路欣也が女優を傷つけたことは一度もないのよ。信じなさい」
断言された。しかし。
セットの中、褥の上では、南小路が痛がる美耶子をおさえつけ、指で性器を乱暴に掻き回している。
血が出ているのは、確かだ。
「しかし――」
「美耶子も、我に返ってないでしょ。むしろ、元の台本より、ずっと美耶姫になっている。あの子は女優の勘でわかってるのよ、これは、必要なシーンだって」
たしかに、美耶子も逃げようと思えば逃げられるはずだ。
「ふふ、膜を完全に破けたのう、どれ、手当をしてやるか」
南小路は美耶子の膣から抜いた血まみれの指を舐め、おもむろに美耶子の性器に口をつけた。
「あ……ああああっ」
美耶子が声をあげる。
「お、おとのさまの……ベロがぁ……」
舐めまわされている。南小路欣也に、美耶子の膣内が。
「あっ、あっ、あんん……うっ」
南小路が顎をうごかし少女の胎内を舐めしゃぶる度に、ぴくん、ぴくん、美耶子の身体が震える。
「ふふ……だいぶん、愛液もでてきたのう」
血と愛液で顔をべとつかせながら南小路が笑う。
「ずいぶんと女陰(ほと)もきれいになったわ」
これみよがしに美耶子の性器を見せつけるようにする。もちろん、今度はカメラもすかさず接写。
いやらしく充血し、血と愛液と唾液でぐちゃぐちゃになった美耶子の膣内がはっきりと映る。
「な……なるほど」
桃山園が呟くように声を漏らす。
「これなら、CGで処女膜をつくらなくても、あきらかに、まちがいなく、美耶姫は処女喪失してるわ」
な、なんだと。
性器を映してもとがめられない子役の撮影で、逆に一番難しいのが処女喪失シーンだと言われる。チャンスは一度しかない。何回も現場をこなすと、もちろん処女膜はなくなってしまう。なまじ全部見せられるから、その時だけ見せないと不自然になる。
苦肉の策としてのCG合成だったが、後から聞いた話では南小路は一言で切り捨てたらしい。「CGなど無粋」だと。観客は本物を見たがっている。「虚構」をギリギリまでつきつめて「真実」にするのが役者の力だ、とも。
それが、このアドリブだったのだ。
結果、カメラは美耶子のありのままの性器を映しとっているのに、観客には処女喪失直後の生々しい膣にしか見えない、という結果が生まれたのだ。
それでは血は――
おれは、南小路がさりげなく指先を褥でぬぐうのを見た。カメラ的には美耶子の膣内を映しているから、シーン的には問題ない動きだ。
あの血は南小路の指先からのものだったのだ。おそらくあらかじめ小さく傷をつくっておき、美耶子の膣内で傷口を開かせたのだ。
おそるべし、南小路欣也。
カットがかからないままカメラはまわりつづけている。
南小路は美耶子の着物を剥いだ。
美耶子は破瓜のショックで抵抗もできない――ように見えた。実際、ショック状態は続いていただろう。
全裸にされ、カメラにおいしいショットをたくさん提供しつつも心ここにあらぬ様子だ。
「さて、次はわしのものを使えるようにしてもらおうかのう」
南大路も脱ぐ――七十歳を越えているとは思えぬ肉体だった。腹筋はおれより締まっているかもしれない。
だが、さすがに股間は萎んでいた。陰毛も白髪が多い。
おれの出番か、と思った。正直、すでにカチカチだ。自分の恋人が男優とベッドシーンを演じているのを見るのは職業がら馴れているといってもいいが、今日のは強烈すぎた。
だが、おれへの指示はこなかった。
南小路が続行したからだ。彼が芝居をやめない限り、カメラも止まらない。
「ではの、美耶姫、次はわしのを使えるようにしてもらおうか」
まだ撮影は始まったばかり!
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