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超世紀莫迦 WEBLOG

□ 南国のパラダイムシフト □

うたかたの天使たち 美耶子のおしごと! 南国のパラダイムシフト(1)

  うたかたの天使たち・外伝
  南国のパラダイムシフト

   プロローグ
 小学生の頃の夏休みの記憶というものは人それぞれだろう。
 家族と出かけた旅行の記憶だったり、プールの塩素くさい水の匂いだったり、田舎のじいちゃんばあちゃんの微笑みだったり、お金持ちの子だったら、避暑地の別荘で一夏過ごしたり、海外にいっていたりするものかもしれない。
 おれにはまったく縁がない世界だが。
 夏休みといえば、おれの場合、どこにも連れて行ってもらえず無為に消化されていくカレンダーの記憶だったりする。バイトができる歳になってからは、ひたすら労働の日々だった。正直、高校時代から両親からの資金援助を期待できない環境だったからな……。
 だから、女の子と海だのプールだのと、そんな華やいだ記憶はまるでなかったのだ。
 それが、だ。
 この夏は南の島で二週間も過ごすことになってしまった。
 おれがマネージャーをしている子役タレント、宇多方美耶子のつきそいで、である。
 子役としてCMやドラマや映画、最近はバラエティまで引っ張りだこの美耶子だが、このほどグラビアでも大成功し、単独イメージビデオの制作が決定した。
 そのロケ地に選ばれたのが南の楽園、ロリーナ王国だ。
 ロリーナ王国は太平洋の赤道近くにある群島からなる小国で、幾度かの世界大戦をほぼ無風でくぐり抜け、日本の信託統治を受け入れたごく短い時期をのぞけば、ずっと独立をたもってきた国だ。
 独自の倫理と文化を持ち、海洋資源も豊かで、欧米の金持ちの地リゾート地としても知られている。
 その南の島で二週間にわたるロケを敢行、イメージビデオ、写真集などのほか、ドラマのロケやCM、バラエティなど、さまざまな撮影をこなすことになっている。
「わーい! 南の島ぁ!」
 ロケが決まり美耶子は大喜びしたのだが、小学生の美耶子を長期間泊まりがけの撮影に連れ出すことは、じつは宇多方家の家訓に反する。家長の一子ちゃんはそういうところは厳しいのだ。
 それで一度話は頓挫しかけたのだが、このプロジェクトにはたくさんの会社やプロダクションが
からんでいて中止となるとたいへんな損害が出る。
 ということで、総合プロデューサーの窪塚氏が下した決断とは――
「宇多方家全員を無料ご招待~!」というものだった。
 すなわち、宇多方家まるごと南洋の楽園に連れて行くというものだ。それであれば、美耶子の「外泊」は「外泊」でなくなる、という理屈だ。
 一子ちゃんはその申し出に逡巡したようだったが、気恵くん以下、苑子も珠子も南の島でのバカンスに超乗り気で、ついに決断したのだ。
 かくして。
 宇多方五姉妹の南国での夏休みが幕をあけた!

 さて。行き先のロリーナ王国について説明しておこうか。
 ロリーナ王国は数十の群島からなる国で、人口は全部あわせて一〇〇万人ほど。
 首都はコドモーナ。大ロリーナ島にあり、人口は五十万人だ。つまり人口の半分が集中している。
 それなりに発展していて、繁華街はビルが建ち並びイトーヨーカドーやセブンイレブン、ツタヤやユニクロ、吉野家もある。信託統治時代の名残もあって、日系資本が多く入ってきているのだ。
 公用語はロリーナ語、英語、日本語だ。住民の大半が日本語で日常会話ができる。
 それにはテレビが大いに関係している。ロリーナ王国には全土にケーブルテレビ網が普及しているが、その番組コンテンツの多くが日本製なのだ。特にアニメの人気が高く、「マシンロボ・クロノスの大逆襲」が放送されたときは視聴率が九五%を超えたそうだ。なぜ、マシンロボなのかは不明だが。
 ともあれ、ロリーナ王国は親日国であるといえよう。それも熱烈な。


 ロリーナ王国にはかなり特殊な習俗がある。
 この国では、満八歳から結婚できる。
 多くの場合、童女は成年男子と、童児は成年女子と結ばれる。
 ロリ婚、ショタ婚が合法なのだ。
 若くして結婚した者は壮年期に入ると、配偶者を老衰や病気で失うことになる。
 そうすると、今度は若い配偶者を求めるのだ。
 平均的なロリーナ人は男女とも一二歳くらいまでに最初の結婚をする。配偶者はたいてい三〇代、四〇代の大人だ。そして二〇~三〇年後、配偶者と死に別れると、八~一二歳の子供と再婚する。
 つまり、若いときは年上の配偶者から性の手ほどきを受け、年齢を重ねてからは若い配偶者にその手管を教え込む。
 ロリーナ王国の離婚率の低さ、幸福度の高さは、こうした独自の性愛観、結婚観によるものらしい。
 そのため、この国では児童ポルノがまったく健全な娯楽として受け入れられている。
 インターネットテレビ局・ロリテレビがそのサーバをこの国に置いたのも、そういった文化的な背景があったからだ。
 ロリーナ王国では、美耶子が出演したドラマや映画の本番シーンが「教材」として小学校の授業でも使われているらしい。
 空港に到着したときに、ものすごい数の出迎えがあったのも、現地での美耶子の人気のためだろう。褐色の肌の女の子たち(かなり可愛い子が多かった)が、美耶子と握手しようと群がってきていた。
 いやな顔ひとつせずに握手し、サインしてやる美耶子はすっかり芸能人っぽくなっていやがる。よしよし、後でたっぷりご褒美をあげないとな。
 だが、今回は一子ちゃん、気恵くん、苑子、珠子も同行している。
 うまいこと立ち回らないといかんな……

                       つづく





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Date:2019/11/20
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